top of page

プレスリリース

航空防災協議会 第3回臨時総会を開催

空域活用が拓く災害対応の可能性―地域防災の新たな挑戦

このたび、「航空防災協議会」は、全国の自治体や関係機関の連携のもと、2025年11月8日に総会を石川県輪島市門前町 仮設集会所で開催いたしました。

令和6年能登半島地震の被災地・輪島市にて、全国の自治体と関係機関が集い、航空防災の未来を語り合う──。官民連携による実証と制度設計が進む中、空からの支援体制構築に向けた新たな一歩が踏み出されました。

■開会挨拶
航空防災協議会 会長である富山県南砺市 田中幹夫市長より、令和6年能登半島地震や全国各地の豪雨災害を踏まえ、航空支援の重要性と協議会の役割について挨拶がありました。

「航空防災の現状や課題について知見を深め、さらなる連携強化や新たな防災対策の構築に向けて貴重な時間を共有していきたいと考えております。令和6年能登半島地震では、場外離着陸場を活用した民間ヘリによる住民搬送訓練も行われました。こうした取り組みを通じて、未来の安全で安心な地域づくりを目指して、一歩ずつ着実に前進してまいりたいと思います。」

■来賓挨拶
石川県 馳浩知事より、映像による挨拶にて「孤立集落からの空輸支援」や「航空管制の安全確保についての重要性」について言及があり、今後の協議会活動への全面的な協力姿勢が示されました。

「昨年は1月8日から10日間ほどで、孤立集落から3300人ほどを安全な場所に運んでいただきました。もちろん陸路からも運びましたが、ヘリコプターなどによる空輸が不可欠でした。こうした大規模災害の際には、あらゆる機関のヘリが一斉に飛来するため、航空管制と安全確保が極めて重要です。普段から関係者が集まり、意見交換を重ねることが、いざという時の連携につながります。」

■ 愛媛県宇和島市 岡原文彰市長が航空防災協議会の副会長に就任
前副会長の退任に伴い、会長一任により新副会長として愛媛県宇和島市 岡原文彰市長が選任されました。

「この度は副会長という重要な役職に推薦いただきましたこと、心より感謝申し上げます。日々進化する航空技術と防災対策を結びつけ、皆様のお力をお借りしながら、より良い未来を目指して行動してまいりたいと考えております。この新しい役割を通じて、航空防災協議会の理念を具現化していくための一助となることをお誓い申し上げます。」

■参加者
全国から5自治体が出席し、現場での航空支援の実施事例や、地域での防災教育の実践に関する講演が行われ、今後の活動に向けた意見交換が行われました。
今後は、より多くの自治体や関係機関と協力体制を築くべく、航空防災協議会への賛同自治体の拡充を目指し、地域の防災力向上のため、全国からの参画を広く呼びかけて参ります。

■参加関係機関

今回の臨時総会には、自治体会員以外にも以下の関係機関・専門家が参加し、講演・意見交換・実証協力を通じて航空防災の実践的な知見を共有しました。
【講師・技術協力者】
 ・石川県危機管理部 危機対策課 危機管理専門官 高橋 豊 氏
 ・JAXA 航空技術部門 航空利用拡大イノベーションハブ 小林 啓二 氏
 ・奥能登広域圏事務組合消防本部 警防課 課長補佐 小谷 真一 氏
【現地参加機関】
 ・石川県危機管理部
 ・輪島市 門前総合支所 地域振興課
 ・輪島市 総務部
【オンライン参加機関】
 ・総務省消防庁 防災部防災課広域応援室
 ・金沢市消防局 金石消防署 担当署長補佐

■航空防災協議会登録自治体一覧(2025年11月時点)
正会員(地域ブロック別、あいうえお順
【関東】茨城県行方市(なめがた)高須敏美市長
【北信越】石川県七尾市(ななお)茶谷義隆市長
【北信越】富山県南砺市(なんと)田中幹夫市長
【北信越】石川県輪島市(わじま)坂口茂市長
【東海】 三重県明和町(めいわ・ちょう)下村由美子町長
【近畿】 兵庫県神河町(かみかわ・ちょう)山名宗悟町長
【四国】 愛媛県宇和島市(うわじま)岡原文彰市長
【四国】 愛媛県大洲市(おおず)二宮隆久市長
【四国】 高知県大月町(おおつき・ちょう)岡田順一町長
【四国】 徳島県三好市(みよし)高井美穂市長
【四国】 高知県室戸市(むろと)植田壯一郎市長
準会員(地域ブロック別、あいうえお順)
【北海道】北海道名寄市(なよろ)加藤剛士市長
【北信越】富山県高岡市(たかおか)出町譲市長
【北信越】福井県勝山市(かつやま)水上実喜夫市長
【関東】神奈川県鎌倉市(かまくら)松尾崇市長
【近畿】奈良県川西町(かわにし・ちょう)小澤晃広町長

■勉強会実施報告
総会後半では、航空防災の実践的な取り組みと教育的活用に関する3つの講演が行われ、参加自治体との意見交換を通じて、現場の課題と可能性が共有されました。

●講演1
「令和6年能登半島地震を振り返って」
講師:石川県危機管理部 高橋豊氏
内容:災害時の航空運用調整班の役割と空域管理の実例
石川県危機管理部 高橋豊氏が、災害時における航空運用調整班の役割と、有人・無人機の空域管理に関する実務と課題を紹介しました。

参加自治体からは「無人機の飛行機会が増える中で、空域の安全確保は喫緊の課題であり、官民を含めた飛行情報の一元管理が不可欠」との声が上がった。また、「昼夜で運用を分ける暫定措置は現実的だが、自治体間での調整ルールや共有フォーマットの標準化が必要」といった意見もあり、制度整備と技術実装の両面からの対応が求められている。

●講演2
「災害・緊急時等に活用可能な航空安全管理システムの研究開発」
講師:JAXA 航空技術部門 航空利用拡大イノベーションハブ 小林啓二氏
内容:D-NET/FOCS技術の進化とK ProgramによるDOER構想の展望
D-NET/FOCS技術を基盤とした新たな運航安全管理システム「DOER」の構想と、経済安全保障重要技術育成プログラム(K Program)による研究開発の進捗を紹介しました。

今回の講演では、一般財団法人国際災害対策支援機構と連携し、実際の民間ヘリコプターにD-NET/FOCSシステムを搭載した実機検証を実施。令和6年能登半島地震で支援活動が行われた輪島市門前町から旧西保小学校までの飛行ルートを再現し、リアルタイムでの位置情報共有・空域調整・災害情報の双方向通信など、現場運用に即したシステムの有効性を確認しました。

この取り組みは、官民連携による航空防災DXの象徴的な一歩であり、今後の災害対応における空域管理の高度化と、自治体・民間・国の連携モデル構築に向けた重要な実証となりました。

参加自治体から「民間機との連携の重要性」や「自治体間・省庁間の情報共有の仕組みを平時から整備すべき」といった声が寄せられ、今後の実証実験や防災訓練において、自治体・民間・国の三者連携による空域管理モデルの構築を進めるべきとの方向性が共有されました。

●講演3
「災害時のドローン活用について」
講師:奥能登広域圏消防本部 小谷真一氏
内容:能登半島地震での実例とオペレーター不足の課題、KDDIとの連携協定による防災DXの可能性
能登半島地震でのドローン活用事例と、オペレーター不足など現場の課題、KDDIとの連携による防災DXの展望を共有しました。

参加自治体からは、「災害現場ではヘリとドローンがそれぞれ異なる強みを持つため、役割分担と連携の設計が不可欠」との声が上がった。また、「空域の安全確保や任務の重複回避のためにも、運用ルールや通信手段の標準化が必要」といった意見もあり、今後の協業体制構築に向けた実証と制度整備の重要性が共有された。

■閉会挨拶
石川県輪島市 坂口茂市長より、地域の安全確保と協議会活動への期待が述べられました。

「まだまだ復興に向かっている輪島市でこのような協議を行えたことに、大きな意義を感じています。いつ何時災害が起こるか分からないからこそ、日頃からの備えと心がけが重要です。全国でも前例のない貴重な取り組みを航空防災協議会で実現できたことは、今後の災害対応の新たな礎になると確信しています。」

bottom of page